いつものように本屋で物色していたら戦国ものの短編集を発見!電車の中でも軽く読めそうなので思わず買ってしまいました。扉絵も素敵ですよね。





内容は戦国モノにありがちなサクセスストーリーではなく、どの物語も悲運のヒーローを描いたものです。6つの物語が収められています。


一つ目の物語は、武田軍団を影で支え続けてきた牢人衆の物語。今で言うところの傭兵軍団の物語です。最後は長篠の合戦で壮絶な死をとげます。その死にざまは戦国の傭兵らしく潔く、清々しさが残る物語です。

二つ目の物語は、石田三成とその勘定方を務めた男の物語。算術の天才で瞬時に兵站に必要な物量を計算し手配する凄腕の事務方です。三成はその男のおかげで頭角を現しますが、その男、人間の心の襞を読むことができません。それが肝心の天下分け目の関ヶ原の合戦で裏目に出ます。

三つ目の物語は、直江兼続に嵌められた男の物語。直江兼続の屑っぷりが半端ない。”愛の兜”とは程遠いほどの屑です。これが本当ならこの男を超える屑武将はいないのではないでしょうか。

四つ目の物語は、柴田勝家の家臣の物語。思いをよせる女の色香に血迷い命を落とした男の物語です。沈着冷静な男が、秀吉との命を懸けた戦いの肝心要で大きな間違いを犯します。それが女の確信犯だということは分かっていたはずなのに。

五つ目の物語は、秀吉に果敢に戦いを挑んだ茶人の物語。茶に対する考え方で秀吉と仲たがいした茶人が行き着いたところは小田原北条氏。茶人は秀吉の北条氏攻めの時に、小田原を守るため一世一代の戦いを挑みます。身を呈して小田原を守った見事な戦いぶりはまさに悲運のヒーローです。

六つ目の物語は、今川義元の息子と彼に仕える鞠職人の話。生まれる時代を間違えた男たちの物語です。今川義元の死後、隆盛を誇った今川家が脆くも消え去った謎が解けました。戦国武将であることを拒み続けた主君と、彼を支え密かに死んでいった男の物語です。


どれも味わい深い作品ばかりで、色々な思いをもって死んでいった戦国時代の人々の息吹を感じさせるお話でした。戦国ものが好きな人にお薦めの一冊です。






国を蹴った男 (講談社文庫)

  • 作者: 伊東 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫



王になろうとした男

  • 作者: 伊東 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: 単行本



城を噛ませた男 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 伊東 潤
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/03/12
  • メディア: 文庫